日本でEVが普及しないのは充電施設が必要だと勘違いしているから

日本のEV化、EV販売比率が上がらない理由を語られる際に、充電インフラが十分でない、という意見がそこそこ見られます。
しかしながら、これはイメージであって実際の利用、日常的な利用では大きな問題にはなりません。

自家用車の走行時間は平均すると1日1時間しかないからです。平均3時間になったとしても、日常的には出先で充電する必要はありません。家で充電しておけば足ります。

EVは外で充電が必要、というイメージが強いことがEV普及が広まらない原因の一つではありますが、充電施設が増えないことは原因ではないと考えています。

なぜかというと、EVは家で充電すれば十分だからです。

日本の車は基本的に1台につき車庫(車庫証明の車庫)が紐付けられています。
世界的には珍しい制度で、日本に路上駐車が少ない理由で、外国の反応まとめブログみたいなので日本の道路が整頓されている!みたいな意見につながるわけです。

逆にいえば、外国では路上に停めておくケースがそれなりにあります。
路駐を基本として運用している車がEVに置き換わると、確かに充電施設の数が必要になります。

日本の場合、車庫証明に登録された駐車場なり車庫で充電すれば日常的には充電施設を利用しなくても問題ありません。

車1台につき必ず車庫があるからといっても集合住宅じゃ充電できないだろ!と思われる方もいるようです。
しかし、集合住宅でも充電ポートは設置可能です。

機械式駐車場の場合、ほとんどの機種でパレットに充電ポートを設置する改造が可能です。
分譲マンションの場合、改造費用を出すのか問題にはなりますが、東京都の場合、結構な額の補助が出ます。

https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2023/06/01/23.html

資産価値をできるだけ下げない(上げるために)補助金が出るうちに充電ポートの設置が進むかもしれません。

ただし、機械式駐車場は重量制限でEVが引っかかるというケースはそこそこありそうです。
重量制限が2トンのものだとEVはCセグメントくらいのサイズになります。

他には日本は100Vだから充電に時間がかかりすぎる、という意見もたまに見かけますが配電盤までは200Vが来ているので200Vのコンセントを設置する費用はたいしたことありません。

EVの充電以外では据付式のIHコンロやエアコンなどで200Vが使われています。
(古い一戸建ての30A以下の配電盤だと100V しか来ていない可能性があります)

あとは、電力をどうやって賄うの?ってのがありますが、再エネの割合は順調に増えているので問題ありません。
2021年にはイギリスで風不足と言われるくらいには、再エネの割合が増えています。

発電量が安定しない再エネは蓄電とのセットで運用する必要がありますが、再エネの伸びに対して蓄電はまだ進んでいません。
現状は増え続けるEVへの電力供給よりも、再エネを無駄にしない蓄電が足りない方が問題です。

蓄電はバッテリーの利用、水素やアンモニアへの変換、重力発電などが検討されています。
水素社会ってのは再エネにするなら蓄電が必要で、余った再エネを水素にしておけば便利だよねって提案です。

再エネは地産地消しやすい反面、再エネに向いていない地域もあり、エネルギー格差の問題もあります。
これは日照時間や土地が問題となります。

東京都内で消費される電気を都内の再エネで確保するのは無理っぽいなってのは、誰にでも想像できるかと思います。
電力の地産地消が進んだ時、東京はどうするのかよくわかりません。

あとは、ライフサイクルアセスメント的にEVは本当にエコなのか?ってのもあります。
自動車におけるライフサイクルアセスメントというのは、製造から廃棄までトータルの二酸化炭素排出量を指します。

これは評価方法が一定していませんが、現在は6年から8年くらいでハイブリッドと同じ程度、それ以上はEVの方が二酸化炭素排出量が少ないとされます。

EVは製造時の二酸化炭素排出量が多いのですが、自動車工場は再エネの利用割合が高いので、ライフサイクルアセスメントでもEVが有利になってきているのが現状です。

日本には車庫があるから充電施設なんてなくても関係ないよね、ってのが日産のサクラです。
(サクラは軽自動車なので多くの自治体では車庫証明は不要ですが、実際には軽自動車にも駐車スペースを用意されているユーザーがほとんどです)

サクラは軽自動車ということもありバッテリー積載量が小さく航続距離も短いのですが、軽自動車で遠出しない(自分で運転して遠出しない)と割り切っているユーザーに売れているようです。

そういったユーザーは外で充電できるかは重要ではありません。しかも、そういったユーザーの多くが高齢者です。

サクラが売れたおかげで日本では高齢者からEVの普及が始まっています。
(サクラの場合は半数が60代以上とのこと)

というわけで、日本においてEV比率が高まらない原因は、EVに対するイメージが古いままでアップデートされていないことではないかと考えています。

どうしてアップデートされないのかは、様々な原因があり、人それぞれではないかと考えています。