2035年のEUガソリン車販売禁止のこと

EUは6月8日、2035年にエンジンを積んでいる車の販売禁止を決めました。
二酸化炭素を排出する車の販売禁止で、これには代替燃料だけを使うエンジンも含まれます。

その後、5年延長の異議申し立てがあり、なぜか日本のネットでは少し湧きました。
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当然のように異議申し立ては通らず。こちらは日本のネットでは盛り上がりません。
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ただ、2026年にハイブリッドや代替燃料についてもう一度評価する、という条件がつきました。
現在の販売禁止は二酸化炭素を排出する車の販売禁止なので、代替燃料+電動ハイブリッドならOKになる可能性はあるのかも。
それでも代替燃料はeフューエルは無理だと思います。合成はあまりにも効率が悪いので。メタノール、プロパノールなどの低級アルコールはワンチャンあるかもしれません。

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この辺りに関しては、色々とあるけれど動画は面倒なので書いてみます。

EUはなぜ車をターゲットにしているのか

まず、EUのEV移行について。
EUは自家用車やトラックを含む自動車から排出される二酸化炭素の量が、1990年比で130%くらい。
これを2030年に1990年比で60%程度に減らそうとしている。
なぜ60%を目標にしているのかというと、工業や農業の二酸化炭素排出量が1990年比で既に60%くらいだから。
つまり、EUが排出する二酸化炭素のうち、車ばかり増え続けているから車がターゲットになっている。
よく言われる、日本のハイブリッドに嫉妬して強引にEVへ移行しようとしている、というのは全くの間違い。
そもそもEUで日本車はあまり売れていない。トヨタよりヒョンデの方が売れるくらいだから、日本車なんて眼中にない。
あとドイツの自動車団体は2035年二酸化炭素排出車販売禁止に反対している。じゃあドイツが国をあげて反対しているかというと、そうじゃない。販売禁止を推進しているのもまたドイツ。

さて、日本の二酸化炭素排出量の内訳をみると、自動車から排出される二酸化炭素は増えていない。
EUのように1990年からの変化をみると、1990年から(恐らくそれ以前から)順調に増えるものの、二代目プリウスが発売される2003年頃から減少に転じ、現在は1990年比で同レベルの二酸化炭素排出量にとどまっている。
EUが1990年比で130%程度なので、EUと比べればEVへの移行圧力は弱いと言えるかもしれない。
日本の場合、家庭から排出される二酸化炭素量は増加を続けている。その点で、東京都の新築太陽光パネル設置義務は妥当かなと考えている。
家屋の断熱や家電の省エネ化は進んでいるのに、家庭から排出される二酸化炭素が増えるのは解せない。
二酸化炭素換算のやり方はいくつかあるようですが、2012年、2013年頃から急に二酸化炭素排出量が増えているのは原発停止の影響でしょう。

水素はめちゃくちゃ有望

EVと並んで誤解が多いのが水素。
まず水素は日本のガラパゴス的なものではなく、世界で注目されて研究されている。
水素をそのまま使う場合と、水素をアンモニアにする場合とがある。
水素をそのまま使うのはほぼほぼ燃料電池。それ以外の芽は現状では微妙。
アンモニアの方が有望。ではアンモニアで何をするのかというと、燃料として使う。
再生可能エネルギーというのは一日を通しても、一年を通しても安定した電源ではない。
なので、余らせて蓄電するのが基本の運用。
蓄電には揚水発電(重力発電と呼ばれる水を使わない位置エネルギーへの変換も)、バッテリーへ充電、水素への変換などがある。
有名なのがノルウェー
全体の96%を水力発電で賄っているけれど、意外かもしれないが水力発電は年間を通して安定した電源ではない。
沢山ダムを作ったところで冬はクソ寒いから凍るし、雪解けの季節はダムからあふれるから無限に水を溜め込むことは出来ない。
なので、余裕がある時にガンガン発電して水素へ変換している。
再生可能エネルギーが目指すのはノルウェーで、太陽光も風力も余裕がある時にガンガン発電して、余った電気はなにかしらの形で貯めておく(蓄電)。
バッテリーへの充電は、テスラのギガファクトリーが既に稼働している。バッテリーなんてすぐにヘタりそうだけど、テスラに言わせれば元を取るのは簡単らしい。
バッテリーへの蓄電は出したり入れたりくらいだけど、水素への変換は応用が効く。
燃料電池での利用、水素からさらにアンモニアへ変換してカーボンニュートラル燃料としての使用など。
アンモニアは船や飛行機、火力発電での利用も研究が進んでいて、船と火力発電は数年後に実用化されそうなくらいのところまで来ている。
トヨタがやっている水素エンジンは、全くの与太話で実用化はまず無理。燃料としての水素は嵩張るくせに燃費が悪いから。
火力発電では水素と天然ガスとの混合燃焼も検討されているけれど、アンモニアなら天然ガスを使わずに100%アンモニアでいける。
それにアンモニアの方が水素と比べればずっとずっと液化しやすく扱いやすい。
水素よりもアンモニアを合成するひと手間かかるけれど、代替燃料としては水素でなくアンモニアが本命。
燃料電池もそれなりに使われると思う。