ピッチングセンターの謎

ほぼほぼCX-60でしか使われない言葉がピッチングセンターです。

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CX-60以外ではこれくらいしか見つかりませんでした。

ロール方向に対してはロールセンターがあり、これはよく使われる言葉です。
ロールセンターがあるのだからピッチングセンターはあって然るべきで、存在するのは当たり前でしょう。
単に注目されてこなかっただけかもしれません。
ただ、マツダCX-60で使うピッチングセンターは単なる方便にしか思えません。
どんな方便かというと、リアサスが動かないことの方便です。

CX-60で有名なリアサスの動きですが、初期入力に対してリニアな反応をしないことが要因ではないかなと妄想しています。
どうしてそうなったのかというと、流石に設計ではないでしょう。
であれば、量産段階に原因がありそうです。
ありそうなのは、部品の公差と組付け制度の公差を組み合わせたときに動きが渋くなる組み合わせが大半になったんじゃないのかなぁと妄想しています。

CX-60のサスの動きは意図したものではないと考えています。
マツダからはサスの動きは意図したものだ、というような発言はなく、むしろ走行テイストが不足していることに原因があるとユーザーからの不満を認める形です。

で、この問題を誤魔化すためにピッチングセンターを車両後方に設定した、と言い出したのではないかと考えています。

通常、ピッチングセンターはホイールベース内にあると思われます。
ピッチングセンターはシーソーの支点です。ピッチングセンターからの距離が長くなるほど上下方向の動きが大きくなります。
CX-60の場合、車両の後方にそれがあるということなので、運転席や助手席の上下方向の揺れが大きくなるのは当然です。

それでもピッチングセンターを車両後方になるように設計した理由として、運転席も後部座席も同じ方向に揺らすためだとしています。
ピッチングセンター、シーソーの支点が運転席と後部座席の間にあれば、運転席が上方向に振動したとき、後部座席は反対に下方向へ振動します。
ピッチングセンターが車両後方にあれば、シーソーの一方に運転席と後部座席がある状態なので、縦揺れは同じ方向になります。
まるで、縦揺れの一体感を求めてピッチングセンターを設定したように思えます。
ジェットコースターじゃなくても、その一体感が必要だと判断したのでしょう。

マツダの資料によれば、ピッチングセンターを車両後方にすることで、縦揺れの大きさは減る一方で、お釣りがきて少し長く振動が続くようです。
実際の走行では、物理のテストにあるような理想的な平滑な面に時々ギャップがあるわけじゃなく、ギャップの連続であり、ギャップの大きさもバラバラです。
揺れが小さくとも揺れにお釣りがあって長く続れば、実際の走行は揺れっぱなしになる可能性があります。
もちろん、そんなことは誰よりもマツダがわかっていたはずです。
(そもそも、マツダの資料にあるピッチングセンターによる縦揺れの違いですが、積分したらピッチングセンターの位置によらず量の変化はないように思えます。そうであれば、縦揺れ回数が増えて長く続く車両後方のピッチングセンターの乗り心地が上回るという判断が理解できません)

つまり、ピッチングセンターを車両後方に設定する、狙いそのものが破綻しているのではないでしょうか。
なので、ピッチングセンターを車両後方に設定、というのは方便であって、意図したものではなかったと妄想しています。

ピッチングセンターを車両後方にと言い出したのは、量産してみたらリアサスが設計通りに動かないからじゃないのかなぁ、というのが今回の内容です。

そもそも、ICEで重量物のエンジンをホイールベースの内側に配置し、ピッチングの支点がホイールベースの外側に存在できるのでしょうか?
リアサスアームの取り付け位置をフロントよりも高くして、フロントのリバウンドストロークをリアよりも大きくすることで可能なような気もしますが、乗り心地は酷いでしょう。
それを狙ったとは考えられません。
ピッチングセンターについて、メディアはもっと突っ込んでほしいのですが、マツダの一方的な主張ばかりです。

もし年次改良などでサスの動きが改善された場合、ピッチングセンターを車両後方に設定、という売り文句が消えるでしょう。
リアサスがよく動けば、自然とピッチングセンターはホイールベース内に収まると思われるからです。

FRでありながら前輪のキャスター角がほとんどついていないのも謎ですが、CX-60は意欲的すぎてまとめることに失敗しているように感じます。