実際のところトヨタはアメリカで作った車を日本へ輸出するのか

トランプ関税が15%になり、現状では対米貿易黒字国では最低の関税率となりました。
15%以下だとイギリスの10%がありますが、イギリスは対米貿易赤字。イギリスの10%を考えると15%は株があれだけ上がったことに納得できます。

交渉では、アメリカで生産した車を日本へ輸出することを提案したそうですが、恐らく最初に言い出したのは豊田章男です。

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日本で作れない車を導入する?

アメリカで生産されている車の中で、日本導入を最も期待されるのはマツダのCX-50ではないかと思います。
CX-50はCX-5をでっかくしたような車で、全幅1920mmもあります。
そのため、マツダの国内工場では大きすぎて生産できないらしいです。

全幅1920mmは大きいのですが、売れまくってるランクルと比べたら少しだけ小さいので国内で使えないサイズというわけではありません。
かといって、国内のどこでも使えるサイズというわけでもありません。
駐車スペースの関係で全幅1850mm以下の制限がある方も多いと思います。

大きいけれど日本でも使えないサイズのCX-50を国内に導入したらそこそこ期待できるけど、国内工場を整備してまで導入はしない、そんな感じです。
CX-50なら年間5000台くらいは売れるんじゃないでしょうか。

つまり、たかが知れています。
これだけでは、トランプが喜ぶディールにはならないでしょう。

アメリカと豊田章男の本当の狙いは日本の認証制度か?

海外モデルの国内導入の一番の難しさは型式認証試験制度ではないかと考えています。

トランプは日本が求める安全性能の高さに文句を言っていましたが、実際には日本の方が甘いです。
軽トラとかハイエースのキャブオーバーは運転席の安全性を確保することが難しく、欧米で新車販売するのはほぼほぼ無理ですが、日本の認証試験はパスできるので販売されています。

豊田章男は日本の基準より厳しい海外の認証制度(主に国連の基準)をパスしていれば国内の認証が取れてもいいだろ、もっと簡易なものになるべきだと繰り返し主張しています。

実際に、輸入車に対してはPHPという優遇措置があります。
型式につき年間5000台までは海外の認証制度をパスしていれば日本の認証制度をパスする必要がなく書類審査で済むというものです。

現状では前述のCX-50を国内に導入しても、実質的に年間5000台が上限となります。

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国内メーカーのグローバルモデルであっても、日本の認証制度で承認され型式を取得するためには数億円の追加コストが発生していると言われています。
認証制度への対応するため、海外での発売から半年から1年ほど遅れて日本に導入されるタイムラグもトヨタは不満でしょう。

EVや中国メーカーの勃興により自動車業界は目まぐるしく変化していて、トヨタは時間がかかることに危機感を募らせているはずです。

トランプが何度となく不満を顕にしたように、日本の認証制度は間違いなく非関税障壁として機能しています。

国内メーカーを守るための非関税障壁のはずが、とっくにグローバル企業であり、国内導入モデルにも海外生産が珍しくない国内メーカーにとっても不満となる制度になっています。

しかし、豊田章男の認証制度に対する主張は国交省を怒らせて、その怒りは不正問題として表沙汰になったのでは?という憶測があるくらいです。
(一方で豊田章男経産省は仲が良いとされています)

輸入車優遇措置のPHPアメリカか、カナダか、ヨーロッパの認証制度をパスしていればいいというもので、もしかすると、アメリカの認証制度に対してだけ上限を拡大するのかもしれません。
そうなれば、CX-50は年間1万台への上積みも可能となります。

また、PHPの緩和措置は海外生産が増えている国内メーカーにとっても、情勢に対してより柔軟な対応が可能になり競争力の強化となるはずです。

まとめ

トランプにとっても豊田章男にとってもWin-Winになるのは、非関税障壁である認証制度の緩和でしょう。