クラウンから考える車種と世代交代の話

現行のクラウンはそれまでのイメージを一新してユーザーの若返りを目指したようですが、セダンのクラウンをやめる決定がされたのであれば、恐らく結果は伴わなかったのでしょう。

同じメーカー、同じ車種を乗り継ぐ人は少なくありません。日本ではクラウンがその代表であり、世界で見るとフォルクスワーゲンのゴルフがそうです。
クラウンとは異なりゴルフは広い世代に支持され、Cセグメントハッチバックの世界標準とも言える車種になりました。

ゴルフは初代、2代目、3代目と徐々に大きくなり価格も高くなっていきました。
意図したのかどうか確かではありませんが、初代ユーザーが独身から結婚、子供が生まれるというような人生のステップアップと呼応するかのようにゴルフも2代目、3代目と車格が増したことで、初代ユーザーに乗り継がれたと言われます。

さらにポロの存在もゴルフが乗り継がれる理由になっています。
ゴルフの3代目と4代目の間にポロの3代目が発売されたのですが、これがちょうど初代ゴルフと同程度の車でした。初めて買う車としてちょうどよかった。
このポロがヒットしたことで、フォルクスワーゲンはポロからゴルフへと顧客がスムーズにステップアップ出来る形を作り上げたのです。

対してトヨタはゴルフとポロの相似形をクラウンで作ることが出来ませんでした。
クラウンに上がる一歩前にはマークIIもありましたが、初めての車にマークIIは向いていなかったでしょう。カローラやコロナ、スターレットからクラウンまでつなぐことが出来なかった。
何より若い人が乗る車としてセダンが避けられた。
クラウンからクラウンへと乗り継ぐ人はいても、「いつかはクラウン」というステップアップの構造を築くことが出来なかった(出来なかったからこそキャッチコピーとして成立し得たのかもしれません)。

クラウンを乗り継ぐユーザーは当然年を取ります。顧客の高齢化で(新車でクラウンを購入する方の平均年齢が65歳以上と言われています)現行クラウンではユーザーの若返りを目指しましたがそれに失敗。
そこでラインナップの豊富なSUVに目をつけ、再び「いつかはクラウン」となるステップアップ構造を目指すのかもしれません。

いつまでもSUVブームは続かないのでは?という意見もありましょうが、ハイブリッド化、PHV化、EV化と電動化の流れにおいて車はさらに大きくならざるを得なく、増える車重を支える大きなタイヤ、それらに伴い車高も少し高めになる流れを考えるとSUVのような形状は今後も続くと考えたのでしょう。

EVによるコモディティ化によりこれまでになかったテスラのような新規メーカーが自動車の製造販売するようになるでしょう。その時に既存のメーカーが選ばれ続けるかは乗り継がれた車種があるかないかは大きく影響するかもしれません。
それを考えると古くから続く車種名を廃止するのは得策とは思えません。なのでクラウンの名前だけは残るのでしょうか。

というわけで私はクラウンがセダンをやめることは残念でもないし当然と考えています。