エスティマはなぜフルモデルチェンジしないのか?

現行のエスティマは3代目で2006年から販売されているので既に11年も継続しています。モデルチェンジが長い車というと、ランクルジムニー、センチュリーなど特徴的な車ばかりで、エスティマのような売れ筋であるワンボックスでこれだけ長く続くものは他にありませんし、これからも出ないのでは?

では、現行のエスティマが売れているのかというと、そんなことはありません。エスティマの2代目は大ヒットでしたが3代目になるとトヨタのワンボックスはアルファードヴェルファイアが人気になったのであまり注目されず。それでも廃止されずフルモデルチェンジするわけでもなく粛々と販売が継続されています。これは、トヨタエスティマという名前を捨てたくないからでしょう。

では、どうしてモデルチェンジもせず。名前を捨てることもないのでしょうか?

かつてエスティマは天才タマゴだった
初代エスティマが販売された当初、「天才タマゴ」というキャッチコピーを使いましたが、トヨタは次のエスティマでもう一度それを狙っているのではないか?と考えています。

初代エスティマはエンジン車体中央に配置するミッドシップレイアウトを採用しました(2代目からは普通のFFになりますが)。ミッドシップレイアウトにして室内空間を広くしたことを指して「天才タマゴ」と呼んだわけです。

他にもホンダの軽自動車、Zも同様にミッドシップレイアウトを採用していましたが、こちはミッドシップレイアウトどころかZという名前すら継続されませんでした。ホンダのZは1998年の登場で、初代エスティマが終わる頃でした。スポーツカーでもスーパーカーでもないのにエンジンをフロントに置かない車はその後も未練がましく時々現れます。三菱のiや最近ではルノーのトゥインゴがあります。いずれも車内空間を広くしようというものです。iの販売は終わりましたが、エンジンをモーターに載せ替えた電気自動車のi-MiEVは現在も販売が続いています。

車内空間が広くとれるメリットの一方で、整備性が悪いというデメリットもあります。三菱のiやトゥインゴはミッドシップではなく車体の後端にエンジンを配置するRRなので初代エスティマなどと比べるとそれほど整備性は悪くないと思います。初代エスティマのようなエンジン配置はもう登場しないでしょう。初代エスティマの発想はよかったものの、整備も車検も必要な現実をトータルで考えると普通のFFの方が良かったというわけです。

ところで、この先、本当に自動運転が普及するのであれば、特にレベル4やレベル5という人間が運転に関与しない自動運転が普及するのであれば、ハンドルやインパネもペダルも必要ないので車内空間を広くして居住性を高めるようになるのでは?と考えます。都市部用の超小型モビリティで実現することも考えられますが、レベル4の自動運転は高速道路やバイパスなどから始まると考えられるので超小型モビリティというよりも、高速バス代わりのタクシーのような感じで利用が始まると考えられるため、室内空間が広く快適なものから始まる、というわけです(もちろん車両価格が高くなると思われるので高級車タイプから始まるでしょう)。

レベル4やレベル5のような完全な自動運転に必要なカメラやセンサーの搭載位置は遠くを見通せるようにより高い部分になると思われますので、セダンやクーペよりもエスティマのようなワンボックスタイプの車が自然なデザインに収まります。また、プリウスPHVではルーフに太陽光パネルを付けることが出来ますが、同じことをするならルーフが大きいワンボックスの方が有利です。ワンボックスタイプのEVやPHVが生まれれば太陽光パネルのオプションは注目されるでしょう。エスティマのようなワンボックスはこの先に期待される技術との親和性が高いのです。

とは言え、レベル5のような完全な自動運転は10年以上先のことでしょう。EVもまだ先かもしれません。だけど、それを匂わせるような先進技術をアピールする車は(既存の自動車メーカーから)どんどん出てくると思われます。エスティマにはそんな未来を匂わせる「天才タマゴ」を期待して、トヨタは残しているのではないでしょうか?

ハイブリッドにはプリウスという専用モデルが象徴となったように、先端技術の象徴となるモデルとして知名度が高いエスティマという名前を残しているのではないか?という気がします。自動運転や全個体電池の実用化が期待される2020年頃にエスティマはフルモデルチェンジではないのかなぁと予想します。