保険会社の症状固定打診には焦らない

交通事故の後遺症で多いのは、いわゆるムチ打ち症です。
ムチ打ち症という名前も定まっているわけではなく、色々な言葉で表現されています。色々な名前がついているのは、ムチ打ちというのは曖昧な面が多いからです。ムチ打ち症は多くの場合、レントゲンやCT、MRIなどの検査で発見することができません。患者の自覚症状から診断しています。ムチ打ち症は外部から客観的にその症状を示すことが難しいため、保険会社と揉めることも多々あります。

保険会社としては、治療費の支払いを出来るだけ少なく抑えたいため、もう治っているのではないか?と迫ってきます。保険会社により異なると言われますが、短いところではムチ打ちは2ヶ月間の治療で打ち切ろうとするところがあります。ほとんどの保険会社で6ヶ月程度です。
ムチ打ちは場合によっては3ヶ月から6ヶ月程度、回復までに時間がかかるといわれますから、保険会社から治療は打ち切りとされてしまうと、それ以降の治療は自費となってしまいます。

では、なぜ保険会社が治療を打ち切れるのでしょうか?

治療をしても、それ以上改善が見込めない状態を症状固定と呼びます。交通事故の場合、骨折したものが治ったら症状固定ですし、手足を切断するような場合は、治療を行っても生えてこないので、切断した部分の傷が治れば症状固定となります。ムチ打ちの場合、治療しても改善しないのなら症状固定とされ、保険会社は治療を打ち切ろうと提案してきます。

症状固定となり回復しなかったものは後遺障害と呼びます。例えば、手足の骨折なら後遺障害が残ることは少ないですが、腰椎や頚椎の場合はマヒなどの後遺障害が残るかもしれません。手足の切断も失った部分は後遺障害になります。

自賠責保険では後遺障害は1級から14級に分類されます。これを基にいわゆる慰謝料が算出されます。ムチ打ちの場合、14級が認められるかどうか、という状況です。14級の基準に「局部に神経症状を残すもの」というのがあり、これに該当すると認められるとムチ打ち症としての後遺障害による慰謝料が支払われます。

ムチ打ちは症状が非常に重いものであっても、客観的に事故との因果関係や狂言ではないことを証明することが難しいため、後遺障害を認められないケースもあります。14級が認められても、治療費を含め自賠責保険の限度額である120万円に抑えようという保険会社は多く、症状によってはまるで足りません。

治療開始から2ヶ月、3ヶ月後でもムチ打ちの症状が残っているのであれば、保険会社の口車にのせられずに症状固定とせずに治療を続けることが大切です。保険会社によっては主治医に電話でプレッシャーをかけるところもあるといいますが、強引に押し通されずしっかりと治療しましょう。プレッシャーが強いようでしたら交通事故紛争処理センターに相談するか、場合によっては裁判となります。

示談の書類にサインをする前に、治療はしっかりと認められるのか後遺障害が認定されるかなど確認してから、納得ができてから示談をしましょう。